「神様からの贈り物」

f:id:shisei117:20171225164013j:plain

ハナを切り、鞍上の武豊の絶妙なペース配分に導かれ、颯爽と走るキタサンブラック

4コーナーを回り最後の直線、「どこで追い出すか」、

早過ぎれば、差し馬に捉まる可能性が・・・

昨年、鼻差差された記憶が脳裏をよぎる。

遅くなれば、馬群に飲み込まれる可能性が・・・

ゴール前300m地点で、鞭が入った。

スパートするキタサンブラック

外から差し馬も一斉に襲い掛かる。

しかし、やはり、強かった。

差し馬に影を踏ますことなく、逃げ切った。

引退レースにふさわしい、有終の美を飾る「見事なレース」だった。

 

馬主であるサブちゃんとキタサンブラックの出会い。

数年前、サブちゃんが北海道に馬の買付に行き、帰りかけたところ、

愛くるしい目で自分を見つめる馬がいた。

サブちゃんは、その目に惹かれその馬を買った。

それがキタサンブラックだった。

その馬は、素直で、まじめでレースになると一生懸命に走る。

そして、何より体が丈夫だったため、厳しい鍛錬に耐え、だんだんと強くなっていき、

半世紀近くの間、G1レースに勝てなかったサブちゃんに7度もその栄冠をプレゼントした。

そんなキタサンブラックのことを、サブちゃんは「神様からの贈り物」だと、

感謝した。

 

私は、キタサンブラックを通して、サブちゃんを好きになった。

一昨年の春の天皇賞を観に京都競馬場に行ったときのこと、

そのレースもキタサンブラックが勝った。

表彰式が終わり、関係者が退場となるところで、

大勢のファンは「サブちゃんのまつり」が聴けることを楽しみにしていた。

そのとき、サブちゃんは歌う予定はなかったのだが、

その熱い空気を察したサブちゃんは、

「今日は私の代わりに武さんに歌ってもらいます」ときた。

 

そのあと「まーつりだ、まーつりだ、キタサン祭り、これが競馬の祭りだよ!」

とやってくれた。

これには、最後まで残っていたファンは大喜び、拍手喝采だった。

f:id:shisei117:20171225190651j:plain

 

このとき私は「ファンを大切にする温かみのある人なんだなあ!」と

サブちゃんのことが好きになった。

 

昨年の有馬記念では、惜しくもハナ差で負けたが、

その時も全レースが終わった後、残ってくれていたファンのために、

「まつり」を歌ってくれたと聞いている。

 

サブちゃん、北海道から歌手を目指して上京し売れるまで苦労された。

一生懸命に走っている馬の姿を見ると、

歌手を目指して一途に走っていた時の自分の姿を思い出すという。

 

そして、馬主になってからも、半世紀近くG1レースには勝てなかったが、

「いつかは!」と夢見て、辛抱強く続けられてきた。

 

そんなサブちゃんに、競馬の神様が微笑んでくれたのだ。

そして「キタサンブラック」という馬を贈ってくれたのだ。

 

昨日の有馬記念では、キタサンブラックの走る姿、愛馬を熱く応援してくれるファンの姿に、サブちゃんは感謝の気持ちで一杯になり、3コーナーを回ったあたりから、涙がポロポロ出て止まらなくなったとのこと。

 

レース後のインタビューでは、

「今までの人生でこんなに感動したことはない!」とおっしゃられていた。

 

多くの競馬ファンも、昨日だけは、馬券が当たったかどうか、

そんなことよりも「キタサンブラックの勝利を心から喜んだのではないか!」

そんな気がした。

 

キタサンブラック

「お疲れさまでした!」

「ありがとう!」

 

今後は、生まれ故郷の北海道に帰り、

自分と同じような、素直で丈夫な強い子を作ってください。

 

そして数年後、その子供がG1レースで勝利し、

そのとき、再びサブちゃんの「まつり」が競馬場に響くことを期待しています。